[41] Sグラウンドへ移動する間、6台のクルマに分乗した女たちは、LINEのやり取りを活発にしていました。みんな、私と同じタクシーに乗せられている彼の動静が気になって仕方ないみたいでした。 <うっかり油断して逃がさないように> 母裕美子から、私宛に、厳重な注意が届きました。 ・・全裸の彼が、どうやって逃げると言うのでしょうか・・。 いつの間にか、女たちの間で、LINEグループが出来上がっていました。 母の招待を受けて私が参加したときには、すでに39名のメンバーが登録されていました。 (なにこれ、多すぎない??) ハンドルネームで参加している女性が多いので、判別がつきませんが、どう見ても、知らないメンバーが加わっています。 おそらく、友だちのトモダチ方式で、今日の出来事に関係のない女性たちが、複数加わっているの違いありません。 唖然として眺めているうちに、あれよあれよと増えて、最終的には150名を超えました。 たぶん、同じような中学生の娘を持つママ友つながりの威力が大きかったのだろうと思います。 グループ名は、"サカモトヒロの性暴力を糾弾する女たちの会"と名付けられていました。 これまでの"まとめ"が語られ、彼のプロフィール(名前、年齢、大学名、所属ゼミなど)が、顔写真付きで公開されました。 まさに公開処刑です。 表示名"さなえ"が、全裸で引き立てられてゆく彼の後ろ姿をUPすると、一気に盛り上がって、レスがたくさんつきました。 新規参加の女性たちは、全員場所を知りたがりました。 しかし、表示名"さなえ"は、 <さて、どこでしょう?ヒントは、都内の女性専用グラウンドです> ・・などと焦らして、教えようとしませんでした。 女たちは、彼のことを、どこまで糾弾し、責め苛めば気がすむのでしょうか・・。 一つだけ、彼にとって幸いだったのは、女権委員会に逮捕された時点で、彼は自分のスマホを取り上げられていたので、 今、どんな風に炎上しているか、知る由もなかったということです。 (もし彼が見たら、150人以上の女性たちの罵詈雑言の嵐に、絶対メンタルをやられたと思います・・) 「ううう、うあわあわああああ!!助けてくれ!!」 自働車の走行中、いきなり、ひろ君が暴れ出したので、私はびっくりしました。 彼は、後部座席から、運転手さんの長い髪の毛をつかみ、 「おろせ!!」と叫びました。 「ちょっと!!お客さん、やめて下さい!!」 二木純恵という名前のドライバーさんが、叫びました。 「やめなさい!」 「危ないから、じっとしてて!!」 監視役の西脇佐和子さん、紅林央子さんは、はっきり言って、油断をしていたと思います。 2人はあわてて両脇から彼の腕を押さえましたが、ひろ君は負けじとばかり、足でドライバーさんの座席を蹴ります! 「おろせ!!おろしてくれええええ!!」 すさまじい抵抗です。 これまで女たちにさんざん痛めつけられ、凌辱されていたので、もはやすっかり観念して、暴れる元気など無いと私も思っていました。 私は助手席から半身を乗り出すようにして、 「ひろ君、お願いだから、おとなしくして。これ以上、みんなに迷惑をかけないで!」 と呼びかけましたが、効き目がありません。 彼は、私に対して、憎悪の目を向けて来ました・・。 (だって、ひろ君が悪いんだよ・・) 私は心の中で、必死に言い訳をしていました。 彼があまりにも暴れるので、運転手の二木純恵さんは、ハザードランプをつけて、タクシーを停車させました。 樹木が生い茂る公園のような場所です。 異変に気付いた他のクルマも、続々と、タクシーの前後に停車します。 「なにやってるの!!」 越石さくらさん、小野りかさん、新妻千枝子さん、小宮さなえさんといったフェミズムのメンバーが、 それぞれ車を降りて、集まって来ました。 「おろせーーー!!降ろしてくれ!!」 ひろ君は、ぐちゃぐちゃに泣き叫んでいました。 「もう、ゆるしてくれ・・。これ以上、オレをイジメないでくれ・・」 哀れっぽい仕草で、泣き続けました。 「いじめてるわけじゃないよ」 越石さくらさんが、冷静に言い返しました。 「あんたは、男の性暴力を抑止し、女性の権利を擁護するための法律に基づいて、身柄を拘束されているんだよ」 榎本美沙子さんも言いました。 「ほらッ、みっともないだけだから、涙をふきなさい」 西脇佐和子さんが、彼の股間を隠していたバスタオルで、涙をふき取りました。 「あらあら、今のですっかり小さく萎んじゃったわねえ」 小宮さなえさんが指摘したとおり、彼のオチンチンは、勃起状態から、ふたたび元の包茎状態に戻ってしまいました・・。 それでも、オチンチンの根元からきつく縛られているので、ロープがほどけてしまう心配はなさそうでした。 「ここ、もうSグラウンドの端っこの方よね。あなた、クルマから降りて、自分の足で歩きたいなら、歩かせてあげてもいいのよ」 小宮さなえさんが、サディスティックに笑いました。 「ははは、そうだそうだ。車から出たいなら、出てもいいぞ!」 越石さくらさんが、彼の下半身に巻きついているロープを引き寄せました。 「お客さん、車内での迷惑行為は、降りてもらいますよ」 ドライバーの二木純恵さんが、ウインクしました。彼女はさっきの仕返しをしているのだと思いました。 「や、やめてくれ!!」 「ははは、あと300メートルくらいだから、歩かせちゃお♪」 秘書の綿貫真梨絵さんが言いました。 いつの間にか、全員が車から降りて来ました。 「よせーーーー!!」 「あら、降りたいって言ったの、あんたでしょ」 「やだーーーー!!」 ひろ君は、まるで駄々っ子です。 越石さくらさんは、苦笑しながら、 (いいから、降ろせ!) と、目で合図しました。 西脇佐和子さん、紅林央子さんが、両脇を抱えて、宙をすべるように、一瞬で彼を車の後部座席から運び出します。 このときには、ひろ君の右手には手錠がかけられ、西脇佐和子さんの左手とつながっています。 大学の先生だという土橋史子さんが、空いた方の手にしがみつきます。 越石さくらさんが、彼の下半身につながっているロープを自分の手に巻きつけました。 「よーーし!行くよ!!」 彼女は、犬の散歩にでも行くように、軽快に歩きだしました。 オチンチンを縛られた彼が、すぐ後ろに従います。 彼は下半身を荒縄で固定されているために、足をもつらせながらも、ついて行くしかありません。 「ちょ、ちょっと、バスタオル!!」 私はあわてて彼に追いつき、腰回りにバスタオルを巻いてあげました。 「せめて、グラウンドの中に入るまでは、いいでしょ・・」 フェミニズムの重鎮たちに怒られるかな、と思いましたが、越石さくらさんはニタニタ笑っているだけで、特段何も言われませんでした。 |