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 彼を取り囲む一団となって、30人の女が動き出しました。
 二木純恵さん(30半ばくらい)、佐々木晴子さん(40前半くらい)の2人のタクシードライバーも加わっています。
 「おらッ!!しっかり歩けよ」
 越石さくらさんが、オチンチンに結び付けられた紐をグイッと引き寄せました。
 彼は、下半身を引っ張られて、ついて行くしかありません。
 「しっかり歩け!!」
 どうしても憎しみがこみ上げてくるのでしょう・・。彼にレイプされた韮崎みくちゃんの祖母、韮崎しず江さんが、彼の尻を蹴飛ばしました。
 バスタオルが、ハラリと落ちました。
 私があわててバスタオルを彼のお尻に巻いてあげようとすると、彼は恨みがましい目で、私を一瞥しました。
 彼のためを思って、バスタオルかけてあげたのに、ひどい・・と私は思いました。
 少なくとも、他の女たちと違って、私だけは、彼を性虐待するのを喜んではいなかったはずなのに・・。
 しかし彼から見れば、きっと私も加害女性側の一員なのでした。
 私は無言で、持っていた安全ピン2本を使って、バスタオルが落ちないように留めてあげました。


 目の前の道は、車2台がすれ違える広さの路地。
 私たちはガードレールの内側を進んで行きます。
 緩やかな傾斜の上り坂となっており、登り切ったところに、グラウンドの入口があるようです。
 10代のカップルとすれ違いました。
 しかし、都会の無関心というのでしょうか、あるいは、大勢の女が周囲をガードしているせいで、 肝心の彼の姿が見えなかったのかもしれません。そのカップルは、それぞれ自分のスマホを眺めていて、 私たちには何ら反応せずに、通り過ぎて行こうとしました。
 「ちょっと、あなたたち」
 小宮さなえさんが、若いカップルに声をかけました。
 「えっ?」
 とふり返った2人は、その場で固まってしまいました。
 ひろ君と手錠でつながっている西脇佐和子さんが、彼の毛髪をつかみ、2人の前に突き出しました。
 「ぐうううううううう・・」
 あまりの屈辱のせいか、ひろ君が動物みたいなうなり声をもらしました。
 「ななな、なにをやっているんだ!!?」
 若いカップルの男の方が、素っ頓狂な声を発しました。
 「あたしたちは、女権委員会だよ」
 越石さくらさんが、げらげら笑いながら、左手にむすんだロープを引き締めました。
 「性犯罪オトコ、引き回しの刑」
 「実の妹と、その友達を強姦した罪で、女権委員会が72時間の権限で、絶賛お仕置き中です♪」
 小宮さなえさんが、バスタオルをめくり、ぺろりと彼のお尻をむき出しにしました。
 彼が羞恥のあまり下を向いてしまうと、大柄な紅林央子さんに、頭髪をつかまれ、無理やり顔を上げさせられます。
 「いまから、妹をレイプした悪いオトコを、吊るしに行くんだ。あなたたちも、見て行きなさい」
 「・・いや、いいです」
 2人は顔を見合わせ、それから後じさりしました。
 「性暴力男が、どういう目にあうか、教えてあげるよ」
 小宮さなえさんが、若い男の子の腕をつかみました。
 「・・いや、ほんとにいいですから!」
 2人は手をつないで、その場から逃げようとしました。
 「もしカレが暴力をふるったりしたら、いつでも、いらっしゃいね!」
 西脇佐和子さんが、2人の背中に向って声をかけました。


 私が驚いたのは、LINEグループ"サカモトヒロの性暴力を糾弾する女たちの会"の中から、早くも場所を特定して駆けつけるメンバーがいたことです。
 1人目は、佐●急便の制服を来た30歳くらいの女性。
 2人目は、20代前半の若いヤク●トの販売員(いわゆるヤク●トレディ)です。
 2人とも自分の仕事エリアだったことから、<都内の女性専用グラウンド>というヒントだけで、 この場所に当たりをつけたみたいでした。
 <現場に到着!!ほんとうに男の子が全裸引き回しの刑にされています!!>
 <なかなか衝撃です!!>
 <やばい>
 ヤク●トレディの女性(表示名"ユミカ")が、興奮気味に連続コメントしました。
 <ネタじゃないですよ!!マジですよ!!証拠写真を送ります>
 "ユミカ"さんは、ひろ君の正面にまわりこんで、スマホで写真を撮りまくりました。


 "ユミカ"
 <画像もう一枚追加>

 "SAIKA"
 <うわーーー裸だ!!>

 "恋姫"
 <はだか!!>

 "パプリカ"
 <裸(笑)>

 "りお"
 <若い男の裸!>

 "ララ"
 <バスタオルしてんじゃんww>

 "らきあ"
 <なんで、バスタオル??>

 "りお"
 <バスタオルは卑怯だろ(笑)>

 "SAIKA"
 <バスタオルの中はどうなってる??!!>

 "ユミカ"
 <わかりません!!しかし、ひもが結ばれています!!>

 "恋姫"
 <全裸じゃないじゃん>

 "らきあ"
 <全裸じゃないな>

 "SAIKA"
 <全裸じゃない・・>

 "りお"
 <うそつき>

 "ユミカ"
 <バスタオル以外は、ほんとうに何も身に着けていません>

 "菜緒都"
 <わたしも着きました。たまたま仕事でラッキー♪>

 "クーミン"
 <いいなあ>

 "SAIKA"
 <実況して>

 "りお"
 <実況>

 "らきあ"
 <何人くらいいる?>

 "ユミカ"
 <女が30人ほど>

 "菜緒都"
 <ゆったりペースで歩いてます>

 "ユミカ"
 <大勢の女にはやし立てられながら>

 "菜緒都"
 <ひもで引っ張られている>

 "亜莉亜"
 <ひも??>

 "ララ"
 <ひも^^>

 "ユミカ"
 <園芸用のロープみたいなの>

 "りお"
 <どこ結んでんだ?>

 "菜緒都"
 <たぶんオ●ンチンだけど、よく見えない>

 "パプリカ"
 <なにそれ>

 "クーミン"
 <ん??どこ(笑)>

 "菜緒都"
 <男性生殖器>

 "りお"
 <タオルイラネww>

 "ララ"
 <バスタオル邪魔ww>

 "SAIKA"
 <とれないの?>

 "菜緒都"
 <無理。わたしら見てるだけよ(笑)>

 "らきあ"
 <ギャラリー集まってる?>

 "菜緒都"
<さっき、若い男女が来たけど、逃げた(笑)>

 "ユミカ"
 <かなり衝撃度たかいよww>

 "菜緒都"
 <あんまり人どおり多くない>

 "坂上季実子"
 <場所どこ??>

 "クーミン"
 <あるいてるだけ?>

 "菜緒都"
 <歩かせられながら、お尻とか、蹴られまくってるよ。あと、髪つかまれたりとか>

 "ユミカ"
 <警棒で叩かれてる・・>

 "やよい"
 <いたそう?>

 "菜緒都"
 <ガチリンチだって!>

 "ユミカ"
 <けっこうあざだらけ>

 "菜緒都"
 <やばいやばい>

 "パプリカ"
 <女の集団リンチ!>

 "SAIKA"
 <男の子は、ぜんぜん抵抗しないの>

 "菜緒都"
 <おんながおおすぎて無理だーー>

 "ひかり"
 <おお、かわいそうにwww>

 "クーミン"
 <妹をレイプした奴だよ>

 "SAIKA"
 <別にかわいそうじゃないな>

 "りお"
 <自業自得>

 "渚"
 <そうだな>

 "ララ"
 <自業自得だね>

 "星風帆"
 <私も着いた!やっぱ、思った通りの場所だった>

 "らきあ"
 <どこ?おしえて>

 "星風帆"
 <考える顔のスタンプ>

 "菜緒都"
 <都内のグラウンド>

 "SAIKA"
 <もったいつけないでよ>

 "パプリカ"
 <せめて、どこ区だか教えて!>

 "ひまり"
 <なんで内緒にするの!>

 "鮎川"
 <教えなさいよ>

 "坂上季実子"
 <隠すことないでしょ>

 "ヴィクトリア"
 <これは、中高生の女の子をもつママ全体で共有すべき問題よ>

 "ララ"
 <そう。秘密主義はよくないわ>

 "あおい"
 <公平に情報を公開すべきだわ>

 "佐伯倫子"
 <見たことある場所なんだけどなあ>

 "MOMOKO"
 <被害者の女の子は、聖泉女子学園?だとすると、××区じゃないの?>

 "水野佳奈"
 <××区だと、グラウンドは、どこかしら?>

 "月夢杏"
 <Sか、K競技場しかないわ>

 "佐伯倫子"
 <K競技場は改修中だから、Sの可能性が高い>

 "ひまり"
 <中学生の妹をレイプするなんて、絶対許せない!>

 "ヴィクトリア"
 <鬼畜お兄さん>

 "月夢杏"
 <吊し上げにしろっ!!>

 "らきあ"
 <あそこをちょん切ってやれ!!>

 "ララ"
 <そうだ!!去勢して二度とレイプできないようにするべき!!>

 "パプリカ"
 <そのための裸なんじゃないの>

 "ひまり"
 <きょせいしろ!!>

 "らきあ"
 <怒りの表情のスタンプ>

 "月夢杏"
 <怒りの表情のスタンプ>

 "SAIKA"
 <怒りの表情のスタンプ>

 "ララ"
 <怒りの表情のスタンプ>

 "あおい"
 <怒りの表情のスタンプ>

 "詩織"
 <怒りの表情スタンプ>

 "MOMOKO"
 <怒りの表情のスタンプ>

 "恋姫"
 <怒りの表情のスタンプ>

 "クーミン"
 <怒りの表情のスタンプ>

 "ヴィクトリア"
 <怒りの表情スタンプ>

 "夢"
 <怒りの表情のスタンプ>

 ・・大勢の女性のコメントで、LINEグループはまさにお祭り状態でした。
 (私は、あまりの盛り上がり具合に怖くなって、途中で見るのをやめてしまいましたが)


 やがて地獄の門が見えてきました。
 S女子体育大学のグラウンド。言うまでもなく、男子禁制の競技場入口です。
 ひろ君の足が一瞬すくんだように見えました。
 が、もちろん、立ち止まることは許されず、女たちに強制的に引き立てられて行きます。


        
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