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ざんげの部屋
5章

 そこへまた、新しい女が二人。
 取り澄ましたスーツ姿の女が現れた。
 皆川小夜子という名前の30前半の女と、吉川亜美という名前の20代半ばの女である。
 霧島由起子が退職した後に採用された秘書課の女たちであった。

 霧島由起子の一件があって以来、秘書課の女に近づくことを俺は母から禁じられていた。
 そのため、皆川小夜子と吉川亜美には、ほとんど面識がなく、二人は夏樹沙耶が言う“被害者の会”ではないはずだ。

 しかし、夏樹沙耶は、
 「よく来てくれたわね。見ての通りの状況だけど、ちっとも反抗的な態度をあらためないので、どうしようかってところよ」
 そう言って二人を招き入れた。

 「うっわーー、ヒサンな姿ですねーー」
 吉川亜美が言った。
 彼女は長い髪をかき上げ、抵抗なく俺に近づいてくると、むき出しになった俺の肉体を、指の先でちょんと触った。

 「もう動けないから、好きにしていいわよ」

 「えーっ、ほんとうに、いいんですかぁ?」

 「……今すぐ、この縄をほどけっ!!!」
 俺は、凶暴な目で、新しく加わった秘書の女二人を睨みつけた。
 「オレが、誰だか分かっているんだろうな!!」

 「えー、知ってる。理事長の息子さんでしょ。有名な」

 「だったら、言われたとおりにしろ!!!」

 「えーーーだって、みんな、怒ってるよ?」
 吉川亜美はケラケラ笑いながら、周囲を取り囲む女たちと、俺の顔を見比べた。
 秘書のくせに、知性のかけらも感じられない馬鹿な女だと思った。

 「おまえは、クビだぞ!!おい、そっちの女も、見てないで、なんとかしろッ!! こんなのどう考えてもおかしいじゃないか。集団リンチだろ、これ!!警察に通報してくれ!!」

 しかし、もう一人の秘書、皆川小夜子は、物静かにたたずんでいるだけであった。

 「なにを言っても無駄だよ、この学園にいる女全員が、あんたの敵だって、言ったはずだよ」
 夏樹沙耶がそう言って、俺の腹にグーパンチを当てた。

 後になって思えば、屈辱的な俺の姿を学園中の女たちに知らしめることで、俺の権威を失墜させ、 粉々に権力を打ちくだくことにこそ、首謀者である彼女たちの狙いがあったのである。



 こうして、総勢16人の女集団が、ぐるりと俺を取り巻いていた。

 夏樹沙耶(29)、西原エリカ(20)、深谷美雪(31)、澤井みつほ(28)、今瀬梨津子(47)、山口あゆみ(33) 澄田美和(37)、大崎裕美子(39)、浜名紀子(43)、霧島由起子(42)、榊英恵(52)、芹澤あかね(34)、 桑原冨美(38)、浅川優(27)、吉川亜美(25)、皆川小夜子(33)

 「このあとは、どうする?」
 サブリーダー的存在の山口あゆみが、首謀者の夏樹沙耶に尋ねた。
 「このまま、三日間くらい、更衣室に吊るしておく?」

 「ときどき、交代でエサをあげにくるか」
 夏樹沙耶が残酷な目をして笑った。

 「生徒たちが驚くわよ」

 「この格好で女子更衣室に吊るしとくのは、教育上よくないわ」
 と、深谷美雪。

 「さらしものの刑。この男にはちょうどいいわ」
 桑原冨美が鼻を膨らませながら言った。

 「それもいいけど」
 女医の今瀬梨津子が言った。
 「もう少し、遊んでやったら」

 「せっかく秘書課のお二人も来てくれたんだしね」
 事務係長の芹澤あかねが賛同した。

 彼女は俺の裸の上半身を指差し、
 「日頃から、きたえたカラダを、こうやって大勢の女に見てもらえて、幸せねえ」

 「有名なんだ、きたえてるの」

 「だって、わざわざ脱いで見せようとするんだもん、わたしに」
  芹澤あかねが俺に近づき、後ろ手に組まれた俺の二の腕をなぞった。

 「それ、セクハラ」
 山口あゆみが笑った。
 「この人の場合、ちっとも驚かないけど」

 「見せるのが好きだなんて、変態」
 浜名紀子が言った。

 「どうせ、ライザップかなにかで、にわかごしらえで鍛えたんでしょ」
 「ヘンタイ!!」
 「気持ち悪い!!」
 女たちが口撃した。

 「女の子とおなじ目にあわせるんだったわよね」
 大崎裕美子が言った。

 「おんなが、オトコにやられるだけの生き物じゃないってことも、教えてあげないとね」
 澄田美和も言い、"女生徒の母親軍団"のメンバーと顔を見合わせ、うなづきあった。

 「オレンジ色のブリーフなんて、イヤラシイわねぇ!」
 浜名紀子が俺の下半身に手をのばした。

 「よせっ!!この、欲求不満女めっ!!男の裸がめずらしいのかよ!」

 「なんだそれ!?」
 山口あゆみが、俺の顔面を張り飛ばした。
 「女性を侮辱する発言は、許さないわよ」

 「……ふん、図星だろうが。こんな風に、徒党を組んで、自分たちの権利を主張する。 卑怯じゃないか。オレをだまして連れて来て。それが女だ!!」

 「それは、あなたが今まで自分でしてきたことの報いじゃないの!」
 夏樹沙耶がビンタをあびせた。

 「ほら、そうやって、すぐ殴る。自分が不利になると、手が出るんだ。女の暴力ほど、たちの悪いものはない」

 「長い歴史の中で、男は常に加害者、女性は常に被害者です。そのことを忘れてはなりません。 男の暴力は、野蛮な歴史のくり返しに過ぎないので、絶対的に封印されるべきです。 これに対する女性の暴力は、ささやかなカウンターとして、許容される場合もあります」
 女弁護士の榊英恵が、かたよった女性優位思想を披露した。

 「ふん、フェミババアめ!」
 俺は、彼女に向って唾をはいた。
 今の俺にできるほとんど唯一の反撃であった。

 「あなたは、そうやって言うけど……じゃあ、あなたが浅川さんにしたことは、たちの悪い暴力行為ではないの?」
 榊英恵が、怒りを押し殺した表情で言った。

 事務用品の出入業者の浅川優は、小柄な体に元気を詰め込んだような明るい性格で、学園のだれからも好かれていた。
 その彼女が、今日は張り詰めた表情で沈黙しているのを、みんな口に出さないだけで不審に思っていた。

 「浅川さん、なにがあったの……」
 口にしてから、はっと気づいたように、深谷美雪が押し黙った。
 「ごめんなさい……」

 澤井みつほと、吉川亜美が、左右から浅川優の手を握りしめた。

 「フン、レズビアンどもめ!女の仲良しごっこってやつか」

 「自分のしたことが分かって言っているの?」
 澤井みつほが目にいっぱい涙をためて、俺を睨みつけた。

 「ふ、ふん、知るかよ!」
 かつて、学園の倉庫で納品作業をしていた浅川優を、俺は手ごめにしたことがあるのだった。
 だが、2年以上前のことで、彼女だって最初は嫌なそぶりを見せたが、俺を受け入れたのである。
 いまさら強姦だと言われても俺は納得が行かない。

 「……もういいわ。こんな男と議論してもはじまらない」
 大崎裕美子が言った。
 「今日、わたしたちは、あなたに罰を与えるために来たのよ」

 「あんたがしたことを、思い知らせるためにね」
 山口あゆみが言い、大崎裕美子、住田美和、浜名紀子ら"女生徒の母親軍団"と目くばせし合った。

 「ふざけんな、お前たちこそ、あとで思い知らせてやるぞ!!」

 「あなたの、その強気が、どこまで続くか……見ものだわ」
 山口あゆみが目を細めた。

 「ふ、ふざけんな……女のくせに……」
 俺は精いっぱい強がって見せたが、彼女たちが憎い男に最大限の侮辱を与え、精神的に屈服させるために、 どんなことを企んでいるかは想像がついた。

 「よ、よせよ!」

 「あら、フフフフ、やめて欲しければ、もっと素直にお願いしなさいな」
 霧島由起子が言った。
 彼女は、過去に俺が言ったセリフを、他の女たちには分からないように、リピートして見せたのだった。

 「これから何をされるか、分かっているようね」
 「そりゃあ、あれだけ悪行を積み重ねていればね、当然ね」
 芹澤あかねと、吉川亜美がうなずき合った。

 「あんたが、男として、"それだけはやめて"って、言っちゃうようなお仕置きメニューだよ」
 夏樹沙耶がにんまりと笑った。
 「もう、謝っても遅いよ」
 この女は、真正のドエスで、頭がおかしいと思った。

 「だれが謝るか!!」

 「それじゃ、スタート♪♪」
 夏樹沙耶が俺のブリーフをつまみ上げた。

 「馬鹿、やめろ!!」
 俺は、両脚をばたつかせて抵抗した。
 どうせ脱がされるにしても、憎い女たちに、一矢報いてやろうと思った。
 しかし、無駄だった。

 桑原冨美が、自己犠牲的に俺の尻に抱きつくと、蹴られることもいとわずに、がっちりと俺の両足首をつかんだのである。
 バレー選手の山口あゆみが、すぐに加勢して、俺の下半身を完全に押さえ込んでしまう。

 霧島由起子、澄田美和、大崎裕美子、浜名紀子らが、競い合うように、俺の最後の一枚をめくり下ろした。
 女たちの嬌声が上がる。

 脱がしたてのブリーフを、夏樹沙耶が俺の前で広げて見せる。

 「どう?恥ずかしい」
 俺の顔に息がかかる距離で、夏樹沙耶が言った。

 「………………」

 「答えて」
 彼女が火のついた煙草を俺の顔に近づけた。

 「……べつに」
 屈辱に震えながら、俺はかろうじて言った。

 「フフフ、そう」
 夏樹沙耶は余裕たっぷりに笑い、霧島由起子にバトンタッチした。

 「でも、すごく鳥肌が立ってるわよ」
 霧島由起子が俺の耳元でささやいた。
 「三澤家の御曹司が、素っ裸で吊り下げられて、オンナたちに、からだの隅々まで、鑑賞されているのよ」
 彼女はそう言って、俺に甘く香ばしい息をふきかけた。
 「イイ気味」

 「ちきしょう!!」

 「うふふ、そうそう、そんな風にあなたが悔しがる姿を、みんな見たいと思っているはずよ」

 「………………」

 「今日は、たっぷりと時間をかけて、嫐りものにしてやるからね。覚悟をおしッ!」
 夏樹沙耶が宣告した。


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サディスティックな♀たちから
虫けらみたいにされてしまう♂の頁

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