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 女子中学生をレイプした男(坂本ヒロ)に対する制裁は、全裸でグラウンドを引き回しするという過酷なもので、最終的に、参加女性200名超になりました。
 平日昼の出来事だったので、家庭の主婦や、学生が中心だったと思います。
 坂本真保ちゃん(レイプ被害者)が通う聖泉女子学園の生徒たちも、2人、3人と駆けつけて来ました。
 ネット中継を見て、居ても立っても居られず、かなり遠くから馳せ参じた女性もいました。
 日中仕事で参加できない女性のために、早くも第二弾を企画する声が聞こえてきました。
 私(宮川梨穂)は、この日、ネット配信を担当していました。
 ネットでは、"#ヘンタイパレード" "#ウイメンズ・マーチ" "#全裸行進"などのタグで拡散され、おそらく何万人もの間でシェアされています。
 坂本ヒロのSNSアカウントは特定され、炎上しています。
 ツイッターでは、『横暴なメスどもの手から、サカモトヒロを救え!!』などというスレッドも生まれましたが、フェミニズム系のアカウントによってたかって攻撃され、潰されてしまいました。
 匿名の掲示板では、愉快犯のオタクアカウントによる、『Sグラウンド爆破予告』などというスレも立ちました。(すぐ消されましたが、この人物は後で逮捕され、女権委員会に送られたようです。)
 あちらこちらで、性暴力男を許さないという大多数の女性と、女権委員会のやり方を"フェミナチ"などと揶揄する男子の論争が起きていました。
 爆破予告が出てから、S女子体育大学レスリング部が6名、応援に来てくれました。
 彼女たちは、グラウンド入口を厳重警戒することになりました。
 信じがたいことですが、女装をしてグラウンドに潜入しようとした男がいて、発覚して、レスリング部にボコボコにされてしまいました。


 坂本ヒロの行為に怒りを覚え、このデモに共鳴する女性が一人、また一人と加わるたびに、彼の歩く距離は確実に増えて行ったのでした。
 「まだまだ!」
 「あと、グラウンド10周!!」
 「ほら立ちなさい!!」
 「寝るな!!」
 「歩け!!」
 「クソオス!!」
 「バカオス!!」
 「情けないチンコさらしてんじゃねえよ!!」
 「泣くな!!」
 「被害女性の痛みを思い知れ!!」
 「しね!!」
 ・・怒り狂う女性たちに取り囲まれ、罵声を浴びせられながら、全裸で歩かされる男は、さぞ心細く、生きた心地がしなかったことと思います。
 男は泣いていました。
 泣いたからといって、むろん女性たちは意に介さず、男の尻を蹴飛ばしました。
 男は、小股で歩き、足がもつれては転び、その都度、女性たちから頭を叩かれたり、背中やお尻を蹴られたりしていました。
 オスの体の中でも、"最も罪深い部分"が、ひもで縛り上げられています。
 女性たちは、交代でひもを引っ張りました。
 女性にとって、脅威をもたらすその部分ですが、今日は、女性たちの前に屈服して、みっともなく、ぶらさがっていました。
 その部分こそが、すべてのオスの"原罪"であると私は思いました。
 身勝手な欲望のために、女子中学生を2人もレイプした犯人。
 到底許すことができません。
 女性たちのパレードは、クライマックスに向かって、歩いてゆくようでした。  あわれなオスは、怒りを表明する女性たちの前で無防備な裸をさらすことで、自分がしたことの罪深さを徹底的に思い知らされたのでした。



 Sグラウンドには、『憩いの森』と呼ばれるエリアがありました。
 芝生が植えられ、休憩用のベンチなどが設置され、草花や樹木に取り囲まれている公園のような場所です。
 S女子体育大学の学生たちは、この場所でお昼ご飯を食べたり、休憩をしたりすると言っていました。
 女性たちのパレードは、最後に、彼の身体を、この『憩いの森』に引っ張って行きました。
 彼は、もうすっかり観念していて、ときどき転びそうになりながらも、女性たちの指示に従って、歩かされている感じでした。
 今さらと思われるかもしれませんが、私(水上麻衣子、彼の5歳違いの従姉です)は、彼のことがかわいそうで涙が出ました。
 ただ、私には、200人超の怒れる女たちによる行進を止める術は、ありませんでした・・。
 やがて、憩いの森の奥にある"彫像"が見えてきました。
 海外の芸術家が作成したフェミニズム・アートだそうです。
 昆虫や、魚や、天使などをモチーフにした不思議なオブジェが、無秩序に展示されていました。
 天使の翼をつけた女性器の像もあります。
 さらに、片方の手で顔面をおおい、苦悩に満ちた表情で歩く男性の像(裸像)が立っていました。
 「前者は、自然界における"女性性の解放"を意味しており、後者については、有史以来女性に対して常に加害者の立場であった"男性性"が、ようやくそれに気づき、己の罪深さにおそれ、おののき、苦悩している」姿なのだと、フェミニストの小野りか社長が教えてくれました。
 ここは、妹に性的虐待を行った彼を処断するのにふさわしい場所だ・・。私は鳥肌が立ちました。



 「ほーら、チンコ、見てごらん、あそこが、お前の処刑場だってさ」
 ギャルママの新見茉優華が、僕の尻を叩きました。
 彼女は、愉しくて仕方がないといった仕草で、他のママたちに笑いかけます。
 「あれ、なんだろうね?」
 竹内亜香里が言うと、
 「見りゃわかるだろ!チンコ、吊るすんだよ」
 そう言って、赤羽根真梨が爆笑しました。
 「性暴力男にはふさわしい最期だね」
 英美鈴もつぶやきました。
 「ほら、呼んでるよ」
 新見茉優華があごをしゃくる先にあるのは、等身大の女性器と、苦悩する男の彫像。
 また、魚の怪物や、羽のある小天使や、蟷螂などの像が、一見無秩序にならんでいる広場でした。
 『・・ご覧ください!!妹に対する性暴力をゆるさない女たちの行進は、ここ"女性解放の広場"にたどり着きました。ここには、およそ200名の女性が、たった一人の男を糾弾するために駆けつけてきました。小学校・中学校の少女たち、S女子体育大学の学生たち、お仕事中にたまたま通りがかった女性、被害者と同じ年頃の娘を持つお母さんたち・・さまざまな年齢、さまざまな立場の女性たちが、一致団結して、性暴力男に、制裁を加えようとしています!!!』
 宮川梨穂という名のカメラウーマンが、絶叫していました。
 『・・ご覧ください!!女性たちの怒りが、たった一人の男に向けられています。この男は、妹と、その友達の中学生をレイプした罪を、身をもって贖うことになったのです!!』
 宮川梨穂の煽動に、女たちの歌声が続きます。
 『ラララ〜ラララ、ララ、ララ、ラララ♪』
 僕は、女たちの歌声を、どこか遠い空の出来事のように聞いていました。
 正直なところ、最後の方は、半分意識が飛んでいたのでした。
 女たちは、広場の入り口付近で、ついに歩けなくなった僕の両足首にロープを結び付けました。
 そのまま、僕の身体を引きずって行きました。
 背中がすれて、燃えるような痛みを感じたことで、現実に戻されました。
 女たちは、僕を、フェミニズム・アートという女性器の前に立たせました。
 大きく開いた口が、僕の全身を飲み込む大きさでした。
 無機質ですが、細部のヒダまでリアルに表現されており、不気味でした・・。
 巨大なマンコには天使の羽が生えていました。
 シュールな像です。
 クリトリス部分に、頑丈な輪がついていました。
 巨大なマンコピアスのようです。
 女たちは、そのピアスの輪に、僕の手を固定しました。
 手錠のしめつけがきつく、両手首から血の気が引いてゆくのが分かりました。
 「こいつは、おあつらえ向きだね」
 女のだれかが言いました。
 僕の背が低いため、吊るすのに丁度いい高さという意味だと思います。
 「これ、もともと、吊るすための道具なんじゃない」
 「男を吊るすところまで含めて、アートなんだよ」
 「ははは、きっとそうだ」
 「おい、チンコ、アートの一部になった気分はどうだ?」
 「光栄でしょ〜」
 「もっと嬉しそうな顔しろ!」
 女たちが言いました。
 これは拷問台だ、と僕は思いました。
 (実際、巨大マンコには、"Tortura genitala"(生殖器拷問)というタイトルが与えられていました)
 巨大マンコが鎮座している正方形の台座には、チェーンで固定されたベルトがついていました。
 それも、2つ。
 アート表現というかもしれませんが、両足を固定するための道具としか思えません。
 まさに"おあつらえ向き"です。
 女たちは、嬉々として、僕の両足首をベルトで固定しました。
 それから、女たちは、僕の下半身のロープを、数メートル離れたもう一つの彫像(全裸で苦悩する男の像)にくくりつけたのでした。
 その、不自然なまでに小さく表現された男性器にも、鉄輪がついていました。
 女たちは、鉄輪にロープをくぐらせました。
 僕は、下半身をつきだした格好で耐えるしかありません。
 苦悩する男の生殖器は、小さく、丸まっていて、まるで子供のようです。
 僕のオチンチンも、同じだと思いました。
 女たちは、僕に最大限の恥辱と、苦痛を与えるために、2つの小さいオチンチンを結びつけたのでした。
 女たちから、拍手喝さいが沸き起こりました。
 ぴんと張ったロープが、容赦なく僕の性器を吊るしあげます。
 女たちは、ロープを緩めたり、力を込めて引いたりと、さじ加減一つで、僕を苦しめることが可能なのでした。
 「も、もう赦してください・・しんでしまう」
 たまたま近くに従姉の水上麻衣子がいるのを見つけ、僕はすがりつきました。
 しかし彼女は僕を一瞥すると、
 「もう、しんで!!」
 と言い放ちました。
 「ふふふ、そう簡単にはしなさないよ」
 若いフェミニストの新見茉優華が、サディスティックに笑い、僕のは腹部に特殊警棒を叩きつけました。
 僕は悶絶しました。
     

        
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