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 あっさり捕まったという連絡を受けて、707号室で待機していた女性たちは爆笑しました。
 「このマンションから逃げられるわけないのにねえ・・」
 「でもまあ・・これで、またヤツを折檻する大義名分が手に入ったわけね」
 「もう、滅茶苦茶にいたぶってやる!!」
 「当然よ、逃げたのが悪いんだから」
 はしゃぎながら、女たちは、全員で彼を受け取りに行くことにしました。
 16人も一度にエレベーターに乗れないので、私(水上麻衣子)と、 上原絵里奈さん、アイリスユンの若者3人は階段を歩いて行くことにしました。
 途中、女子大学生の上原絵里奈さんと少し話をしました。
 彼女は、「ちょっとかわいそうじゃない?」と、私たち2人の反応を確かめるように、慎重に切り出しました。
 「え、だれが??」
 と、アイリスユン。
 「誰がって、もちろん、彼のことよ」
 「ええーー!!なんで?レイプ犯だよ」
 アイリスユンが、階段に響くかん高い声を上げました。
 「女の手で制裁を受けるのは、アジアでは常識」
 「それはそうだけど・・」
 「いいから、早く行こっ♪」
 高らかに笑いながら、アイリスユンは、軽いステップで階段をかけ下りて行きました。
 彼女は踊り場で一度立ち止まると、私たちの方をふり返り、
 「そんなこと言ってると、あなたまで"修正"されちゃうよ!アジア女連は、だれにも容赦しないよ!」
 そう言い残して、先へ行ってしまいました。
 上原絵里奈さんは、明らかに話したりなさそうな、不満が残る表情をしていました。
 ただ、私も内心思っていたことなので、思い切って言ってみることにしました。
 「ちょっとやりすぎかも・・って、わたしも思うよ」
 私が自分の考えを口にすると、上原絵里奈さんはうなずいて、
 「なんか、みんな彼を虐待して、イジメることを愉しんでるみたい」
 ぽつりと言いました。
 「それは、あたしだって、中学生の妹をレイプしたって言われると、許せない気持ちになるよ。 でも、こんな風に無理やり拉致って来て、何時間も監禁して・・それに彼の言い分だって、 本当はもっと聞いてやらないといけないんじゃないですか」
 上原絵里奈さんは、ぱっちりとした瞳に涙をためていました。もともと正義感の強い人なんだと私は思いました。
 「上原さんは、どうして、ここに来たんですか?」
 私は、彼女が張り詰めすぎないように話題を変えることにしました。
 「あたしは、大学のゼミで女性学を学んでいて・・女権委員会の実地研修を受けることが、 単位取得の条件になっていたから、お願いして来させてもらいました」
 「そうなんだ。何年生?」
 「次、4年です」
 「じゃあ、就活かー」
 「ええ、とっても大変」
 「不景気だからねー」
 「ほんと、いやになるわー」
 「…………彼のことだけど、わたし、いとこなんだ」
 「あ、聞いて知ってます」
 「昔は、妹の真保ちゃんと、彼と、3人でよく遊んだんだけどなー」
 「お風呂、のぞかれたって、さっき言ってましたよね」
 「……………………」
 「やっぱり、性犯罪とか、そういうのって、再犯率がものすごく高いから、厳しく取り締まらないとダメなのよね」
 「わたしは法律とかよく分からないけど、そうなんでしょうね・・」
 「彼の裸見て、どう思いました?」
 「どうって……べつに……ただ、かわいそうだなって」
 「正直言うと、あたしは、ちょっと興奮した」
 重大な秘密を打ち明けるように、上原絵里奈さんが言いました。
 彼女が先に言ってくれたので、私は気持ちが楽になると同時に、罪悪感を覚えました。
 「実はわたしも!」
 お互いに感じていたことを、学生で年下の彼女に言わせてしまったことへの贖罪から、 私は大きな声で賛同しました。
 「彼、意外とカワイイ系じゃない?顔が小さくて、背も低いし。体毛も薄いし。そんな彼が、女の手で、裸に剥かれて、 羞恥で震えている姿を見て、ジンジン来ちゃった」
 「あたしもです。もっと、彼のことをイジメたいなって、思っちゃいました。コワいおば様たちが大勢いるので、なかなか手出ししづらいですけど」
 「そう!わたしも。ちょっと、あの雰囲気は手出しできないわよね〜」
 思いがけず、上原絵里奈さんと意気投合した私は、嬉しくなってしまいました。
 「今回のお仕置きが済んで、彼が解放されたら、彼にお風呂のぞかれた件で、個人的にお仕置きしようかな・・」
 「えーー!ずるい、あたしも呼んで下さいよ!」
 「ははは、冗談、冗談よ」
 「なんだー。でも、今のは、ちょっと本気ぽかったですよ」
 「わたしたち、みんな"S"なのかな?」
 「違うと思いますよ。集団の雰囲気にのまれて、オラオラになっているだけ・・。おば様たちは、正直、ドエスだと思いますけど」
 「ひろ君は、やっぱり"エム"なのかな?」
 「えー違うんじゃないですか。あそこまで虐待されて、喜ぶ男なんているのかしら」
 「おば様たちの中では、だれが一番、"S"だと思う?」
 「ええー?どうかな、やっぱり榎本美沙子さんじゃないかしら。彼女、うちの大学で講演したことがあるけど、 "女の敵を切りきざむ会"の代表ですよ」
 「でも、あんまり熱心じゃない気がしない?」
 「どうなんでしょう?彼女は、社会的地位のあるオジサマを責める方が好みなんじゃないですか」
 「ひろ君みたいな軟弱なタイプには興味ないか・・」
 「だと思いますよ。講演でも、"切りきざむ相手は、主に政治家や、医師や、起業家などが多い"って言ってましたもん」
 「越石さくらさんって人もやばいね」
 「ああー、彼女は真正のドエスですよね」
 「男が嫌いな感じがにじみ出てる」
 「あと、小宮さなえさん。わたし、ちょっと苦手です」
 「あーー!分かる。あの人、元キャスターで美人だけど、なんか意地悪いよね」
 「あたしもそう思います」
 「彼のオチンチンをずっと触りまくってて、イヤラシイし」
 「痴女なんじゃないですか」
 「ははは、そうかも。小野りか社長は、かっこいいよね」
 「はい!あたしもそう思います。元警察の西脇佐和子さんも背が高くて、クールで素敵ですよね」
 「同感」
 「あと、一つ言ってもいいですか?」
 「なに?」
 「ずーっと、マスクして顔隠して、見てるだけの人いるじゃないですか」
 「ああ、犯罪被害の彼女」
 「ちょっと、コワくないですか?」
 「松浦希空さんでしょ。彼女は直接関係ないけど、ああやって男性の懲戒場面に立ちあうことで、 性犯罪でキズつけられた心を癒す効果があるみたいよ」
 「麻衣子さん、いつの間にか、わたしより詳しい」
 上原絵里奈さんは笑い、私の下の名前を呼んでくれました。
 「エリナちゃん、わたしたち、仲良くしましょうね」
 「はい!」
 「あ、早く行きましょう。次のお仕置きが始まってるかも」
 「そうですね。今度、女子会しませんか?彼も呼んで」
 「またみんなで、お仕置きしちゃうか」
 「それがいいですよ!」
 「じゃ、行きましょう」


    
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