[19]

 それまで座っていた、"性被害体験者の会"の松浦希空が立ち上がり、女たちの輪に加わりました。
 ソファーの位置からは、吊し上げられる僕の姿を、真正面から眺めることができます。
 越石さくらが、目を細めました。
 「さぁて、真保ちゃんたちが来てくれたところで、仕切り直しだよ」
 「どうするんですか?」
 叔母の水上裕美子が尋ねます。
 「さあ、どうしましょうかねえ」
 越石さくらがニヤニヤ笑いながら答えました。
 「さっきまでは、スパンキング(お尻ペンペン)のお仕置きをされていたのよ」
 榎本美沙子が解説します。
 これから何が始まるのか・・・・正面のソファ席から、妹と、水上麻衣子が、固唾をのんで見守っています。
 そこへ、母真由子が近づいて、いきなり僕の顔面をぶん殴りました。
 二度、三度と殴ります。
 「ぐは!!」
 鼻血が出ました。
 母真由子は、ウエットティッシュで僕の血をぬぐいました。
 その後で言います。
 「ひろ。どうして、あんなことしたの。自分のやったことが分かってるの」
 僕は、答えられません。
 ただ、小さな声で、「許して下さい・・・・」と言うのが精一杯でした。
 すると、もう一発、僕の顔面を叩きました。
 「ギャフ!!」
 鮮血が飛び散ります。
 母真由子は、仁王立ちになり、真正面から僕を睨みつけます。
 「真保に謝ります。だから、この縄をほどいて・・・・おろしてください」
 僕は懇願します。
 でも、ダメでした。
 母真由子は、僕の股間を、ブリーフの上から、わしづかみました。
 「痛い、痛い。やめて」
 母真由子は鬼の形相で、ブリーフの上から僕の大事な部分を、丸ごと握りつぶします。
 「ええい!!お仕置きだ!!こうしてやる!!」
 僕は、あまりの苦痛に、泣き叫びます。
 「やめて!!許して!!」
 「このッ!!このッ!!真保に謝れ!!みくちゃんに謝れ!!」
 「あ、謝るから、謝るから、許して!!」
 「謝って済むと思うな!!」
 いつもは冷静は母が、この時は明らかに取り乱していたと思います。
 わずか一枚の布きれで包まれた男の急所を、ねじりつぶそうとします。
 「うわあ、残酷」
 女のだれかが思わずつぶやきました。
 「それ以上やると、本当に睾丸がつぶれて死んでしまいます」
 女性医師の新妻千枝子がやんわりと制止しなければ、きっと、僕は母親に殺されていたかもしれません。
 母親が手を離した後、ブリーフが湿っていました。
 僕は、少しお漏らしをしていたと思います。
 「一度、下した方がいいわ」
 新妻千枝子の指示で、僕は解放されました。
 もちろん、これで許されたわけではありません。
 ロープが解かれ、床に崩れ落ちます。
 女たちは、僕を、真保たちが座っていたソファーの上に運びました。
 「ごめんね。真保ちゃん」
 紅林央子が、ソファーをベッド形式に作り変えます。そこで、寝かされました。
 叔母の裕美子が、母真由子の背中をさすって落ち着かせようとしていました。
 新妻千枝子が、ブリーフの上から、僕の股間に触れ、「これくらい触っただけでも痛い?」と質問しました。
 「い、痛いに、・・・・決まってるだろ!!」
 僕はうめきます。
 「脱がして診察するわよ」
 「・・・・い、いやだよ。やめろ!!」
 「暴れると、みんなで、押さえ込むわよ!!」
 暴れるほどの力は残っていませんでした。
 越石さくらと、小宮さなえが、僕の両手をつかんで、バンザイの格好にさせました。
 その手に、"痴漢性暴力110番"の西脇佐和子が、ステンレス製の手錠をはめこみます。
 榎本美沙子は、片方の手で、僕の髪の毛をつかんでいます。
 水上裕美子と麻衣子の母娘も、暴れないように胴体を押さえます。
 アイリスが、僕の腹にまたがりました。
 そこまでしなくても、紅林央子に、両足首を押さえられた時点で、身動きできません。
 女医の新妻千枝子は、僕が完全に女性たちに押さえ込まれたのを確認すると、ゆっくりと、パンツをめくり下しました。
 恐怖と屈辱のあまり、小さく丸まった生殖器があらわになります。
 「見ないでくれ!!!」
 「見なきゃ、診察にならないでしょうが」
 越石さくらが言うと、女たちが、どっと笑いました。
 真保も笑ったようでした。
 女医の診察が始まりました。

    
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