[3] むろん、僕だって、ここまで黙ってついて来たわけではありません。いや、実は、滅茶苦茶に暴れて抵抗したのです。 生まれてはじめて、本気で女を殴ったかもしれません。 だって、女権委員会などへ連れて行かれたら、おしまいだもの。 "お迎え"にやって来た委員は、8人もいました。 男を有無を言わせず強制連行するために、これくらいの人数が必要なのだそうです。 全員、おそろいの赤ジャージを着けています。(これが、女権委員の"戦闘服"なんだそうです) メンバーの多くは、ふつうの主婦やOLたちがボランティアで活動しているようです。 驚いたことに、お腹が丸くふくらんでいる女性が加わっていました。 小さな子供を連れた女もいます。 彼女たちは、ドライバー役で協力するみたいです。 何度か挨拶したことのあるご近所の奥さんの姿を見かけました。 まさか、彼女が女権委員だったとは。 僕は、二階にある自室へ逃れました。 母親の真由子が、叔母の裕美子(母親の妹)を従え、8名の委員を先導して階段を上がって来ました。 なんで叔母さんまでいるんだよ。(あとで分かったのは、女権委員会に呼ばれたらしい) 「ひろ君、開けるわよ」 母真由子は、部屋の合鍵を持っていました。 赤ジャージ姿の女どもが、僕の部屋に無断で乱入して来ました。 僕は、テニスラケットを振り回して、抵抗します。 母真由子は、僕の足にしがみつき、「お願いだから、おとなしくしてちょうだい」と言いました。 (・・・・ふざけんなよ、あんたが、通報したんだろうが) 母真由子は、大手女性下着メーカーの部長で、いわゆるキャリアウーマンです。 この日は、普段通り、朝5時に起きて、6時前には出勤したと思っていました。 仕事に行くふりをして、実の息子を、女権委員会に引き渡す手はずをととのえていました。 数人の女が僕の足を抱きかかえました。赤ジャージ軍団は、初歩的な戦闘術を仕込まれています。 僕がひるむと、すかさず、痴漢撃退用のからしスプレーが噴射されました。 涙を流してのたうち回っているところへ、凶悪な女子プロレスラーみたいな身長175センチ、体重80キロの女が、強烈な金蹴りを食らわしました。 これで完全にノックアウトです。 僕は、母親と叔母さんを含めた女10人に、手足を持ち上げられ、おみこしのように家の外まで運び出されてしまいました。 いいさらし者です。 「なに、あれ」 通学途中の女子中学生が、驚いて見ています。 女たちに宙吊りされる無様な姿を、写メで撮られたかもしれません。 表で待機していたクルマ(女社長が所有するワゴン。男を連行しやすいように、窓にはアルミ格子がついている。他に母が運転するBMW、叔母さんの軽がいる)に乗せられ、女たちのアジトへ。 走って逃げられないように、靴を取り上げられています。 |